Radiance [CD, Import, From US] キース・ジャレット

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0007YH4EO/
2002年の日本公演。感動的な「ラ・スカラ」でのソロ以来、久しぶりのソロ録音です。キースのピアノ・ソロと言えば、20~30分、あるいはそれ以上の長い演奏がお馴染みでしたが、この作品で初めて、短い即興演奏をいくつも続ける形で演奏しました。これまでのソロと異なり、冒頭は具体的な主題を持たない漠然としたフレーズから始まり、段々と形を成していきます。特にPartⅢのこの上無く美しいメロディに収斂していく過程は感動的です。また、いつものことながら、ピアノの音が素晴らしく美しいです。こんなに美しいピアノの録音はないだろう、というくらいです。これはキースだけでなく、エンジニアの力も合わさっての成果でしょうね。

CDの中には、キース自身のノートが入っています。アルバムのコンセプトを知る上で、奏者の考えが一番の手がかりになるでしょう。最初の段落だけ訳して掲載しておきます。
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この音楽について
日本へ行く数ヶ月前、私はあるアイデアを思いついた。私はこれまで、エネルギーをその都度何か新しいものに変換することに関わってきたが、今回はその変換したものを実際の形式の中に含めてしまおうと思ったのだ。私の過去のソロ・コンサートのリスナーの多くは、(少なくとも)一瞬、冒頭に主題素材―あるいは動機素材素材が欠如していることにショックを受けることだろう。素材は一見して全く動機という種類のものではない。これは偶然ではない(あるいは計画されたものでもない)。私は早まった結論を出したくなかったのだ。我々がどのように深遠な思考へとたどり着くかは、我々が事前に何も考えていないということと深く関係している。私は椅子に座って深く考え込むことなしに、音楽を発生するがままにさせようとした。私は手に(特に左手に)何かを言わせたかったのだ。これが私が試みたかったプロセスの一部である。何かが変換する瞬間というのは滅多に見られるものではない。あるいは我々が不注意だからそう感じるのかもしれない。我々が変換する瞬間にたどり着くまさにその場に居合わせる為には、多くのプロセスを経なければならない(もしも我々が注意深く見ているなら)。しかし多分これは間違っているのかもしれない。それらは我々がその場にいなくとも起こり続けているのかもしれない。リスナーは辛抱強く私のやることを見守っていただきたい。全てのことはリスクを伴う。しかしそのようにしてこれまで私はあなたがたを様々な場所へ連れて行ったわけだし、今回皆さまをがっかりさせようと思ってこのようなことをしているわけではないのだ。~~~(訳:CD-ROG.com)
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こんな感じですが、もしこれを読んで聴いてみたい!と思った方は是非聴いてみてください。

Inside Out [Import, From US] キース・ジャレット

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005ND35/
2001年発表。キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネット3者が繰り広げるフリー・インプロヴィゼーション。曲による束縛のない「無」の状態から、音楽が自然と形成されていくプロセスを聴くことができる。

どのトラックも素晴らしいが、特に4番目の”Riot”が印象深い。個人的には、このアグレッシブな世界は、ハードロックとも通ずるように感じた。このトラックに限らず、このアルバムの世界は「ジャズ」という枠を越えている。この3者の音楽的イディオムの豊富さには驚嘆する。真の意味で「ジャンルの垣根を越える」ことのできる人たちだからこそ可能な音楽だと思う。