Concerts (Bregenz) [Import, From US, Live] キース・ジャレット

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000261I1
キース・ジャレットの音楽語法の多彩さには、毎回驚くが、これを聴いたときにも、また新鮮な驚きがあった。81年の公演からの抜粋らしい。キースのソロの中で、特に穏やかな明るさが感じられる魅力的な1枚。たしか、映画「マーサの幸せレシピ」で冒頭のメロディが度々登場していた。

Restoration Ruin / Bap-Tizum [Import, From US] キース・ジャレット

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00000J83G
キース・ジャレットという「人」に興味がない人は、聴く必要がないかもしれない。決して「素晴らしい」作品とはいえないからだ。「キース・ジャレットという超大物ピアニストの作品をまず何か聴いてみたい」という人は、「ケルン・コンサート」や「ラ・スカラ」といった素晴らしいフリーインプロヴゼーションのソロアルバム、あるいはバンドものの「マイ・ソング」などがいい。これらを聴いて、更にキースの幅広い音楽活動の軌跡に触れたい人がこの「レストレーション・ルーイン」や「スピリッツ」といった問題作(?)にアプローチしてみるといいのではなかろうか。

キースはビートルズとボブ・ディランが好きだったらしいが、その影響を受けたフォークソングのアルバムだ。このアルバムの凄いところといえば、弦楽四重奏を除く全ての楽器を、キースが演奏しているところだろう。リコーダーやソプラノ・サックスなんか、普通にうまい!ピアノにとどまらないキースの多彩ぶりが発揮されているということはできる。

一方、肝心のヴォーカルはそんなにうまくない。「普通に歌っている」という程度だ。でもソロピアノのような変な奇声はない・・・

ジャケット裏面に面白いことが書いてあったので、分かる範囲で訳してみる。
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(以下裏ジャケットの訳)

このアルバムに、どんな風にアプローチすればいいかって?簡単なことさ。「聴け。」でも、シラノ・ド・ベルジュラックが彼の鼻の質問にアプローチしたよりももっと多くのアプローチの方法がある。

驚いて:わお!これを全部一人でやったの?
現実的に:現代的なテクニック。技術的な意味でも芸術的な意味でも創造的。これが答えさ。+キース・ジャレット。
観察して:これらの歌は、今日のVisible Generationの特別な目を通して世界を見た、現代のコメントの優れたコレクションさ。
Comprehending:彼らは、遠回しだが辛辣に話し、非直接的に鋭く定義された結論を明るみに出す。

量的に:他の誰が、こんなに多くの様々なことをできるだろうか?

質的に:他の誰が、こんなに多くの様々なことを、これほどうまくできるだろうか?

統計的に:彼は”For You and Me”では、2つのギターパートすらも演奏している。

音楽学的に:最も現代的で印象的な才人による、もっとも印象的な現代のステートメント。

歴史学的に:こんなに何かを出来たのはこれが初めてだ。

哲学的に:思いついたことを、人は出来るのだ。

鑑賞して:何にも問題はない。これは良いアルバムだ。たとえ別の3人が作詞、作曲、編曲をして、何人かで演奏したとしても。

不満そうに(1):ジャズファンは、哲学的なフォークがを作り、歌うキース・ジャレットを受け入れるだろうか?
自信満々に:それで?
不満そうに(2):ポップス・ファンの大衆は果たして聴くのだろうか?
自信満々に(2):テキサス・レンジャーズがかつて言ったように、もし彼が正しくて、そうあり続けるなら、銃は彼を止められはしない。
質問して:モダン・ジャズ・ピアニストとしての彼の素晴らしい評価がありながら、どうして彼が演奏する全ては、一連の放埓なホンキートンクなの?
受け入れて:彼は、ピアノでする必要があること以外の全てをうまくやっている。
冷笑して:ドノヴァンはもっとうまく歌うし、セゴヴィアはもっとうまくギターを弾くよ。
突き返して:ジャレットはドノヴァンより演奏で勝り、セゴヴィアよりもうまく歌うのさ。
悪意に満ちて:どうして、彼はストリングス・パートも演奏しなかったの?
現実主義的に:キース・ジャレットにだって、限界はあるのさ。
懐疑的に:キース・ジャレットがこなにうまく歌を書き、うまく歌い、自分で伴奏出来たなんて、誰が想像しただろうか?
確信して:「キース・ジャレットは、心に思い描いたことは音楽で何でもできてしまう」(チャールズ・ロイド)

(以上)

ああ、疲れた。こんなに面白い解説文見たことないな。ちょっと、訳が難しくて不正確なところもあるかもしれないけど、大まかにはこれで意味が通じると思う。ともかく、天才ピアニストの別の顔が見れるという意味で面白い。

Radiance [CD, Import, From US] キース・ジャレット

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2002年の日本公演。感動的な「ラ・スカラ」でのソロ以来、久しぶりのソロ録音です。キースのピアノ・ソロと言えば、20~30分、あるいはそれ以上の長い演奏がお馴染みでしたが、この作品で初めて、短い即興演奏をいくつも続ける形で演奏しました。これまでのソロと異なり、冒頭は具体的な主題を持たない漠然としたフレーズから始まり、段々と形を成していきます。特にPartⅢのこの上無く美しいメロディに収斂していく過程は感動的です。また、いつものことながら、ピアノの音が素晴らしく美しいです。こんなに美しいピアノの録音はないだろう、というくらいです。これはキースだけでなく、エンジニアの力も合わさっての成果でしょうね。

CDの中には、キース自身のノートが入っています。アルバムのコンセプトを知る上で、奏者の考えが一番の手がかりになるでしょう。最初の段落だけ訳して掲載しておきます。
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この音楽について
日本へ行く数ヶ月前、私はあるアイデアを思いついた。私はこれまで、エネルギーをその都度何か新しいものに変換することに関わってきたが、今回はその変換したものを実際の形式の中に含めてしまおうと思ったのだ。私の過去のソロ・コンサートのリスナーの多くは、(少なくとも)一瞬、冒頭に主題素材―あるいは動機素材素材が欠如していることにショックを受けることだろう。素材は一見して全く動機という種類のものではない。これは偶然ではない(あるいは計画されたものでもない)。私は早まった結論を出したくなかったのだ。我々がどのように深遠な思考へとたどり着くかは、我々が事前に何も考えていないということと深く関係している。私は椅子に座って深く考え込むことなしに、音楽を発生するがままにさせようとした。私は手に(特に左手に)何かを言わせたかったのだ。これが私が試みたかったプロセスの一部である。何かが変換する瞬間というのは滅多に見られるものではない。あるいは我々が不注意だからそう感じるのかもしれない。我々が変換する瞬間にたどり着くまさにその場に居合わせる為には、多くのプロセスを経なければならない(もしも我々が注意深く見ているなら)。しかし多分これは間違っているのかもしれない。それらは我々がその場にいなくとも起こり続けているのかもしれない。リスナーは辛抱強く私のやることを見守っていただきたい。全てのことはリスクを伴う。しかしそのようにしてこれまで私はあなたがたを様々な場所へ連れて行ったわけだし、今回皆さまをがっかりさせようと思ってこのようなことをしているわけではないのだ。~~~(訳:CD-ROG.com)
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こんな感じですが、もしこれを読んで聴いてみたい!と思った方は是非聴いてみてください。

Inside Out [Import, From US] キース・ジャレット

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005ND35/
2001年発表。キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネット3者が繰り広げるフリー・インプロヴィゼーション。曲による束縛のない「無」の状態から、音楽が自然と形成されていくプロセスを聴くことができる。

どのトラックも素晴らしいが、特に4番目の”Riot”が印象深い。個人的には、このアグレッシブな世界は、ハードロックとも通ずるように感じた。このトラックに限らず、このアルバムの世界は「ジャズ」という枠を越えている。この3者の音楽的イディオムの豊富さには驚嘆する。真の意味で「ジャンルの垣根を越える」ことのできる人たちだからこそ可能な音楽だと思う。

パリ・コンサート- キース・ジャレット

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キース・ジャレットのパリでのソロ・コンサート(1988年)。この演奏の特徴は、バッハなど、バロック風のテイストが強いことだろう。対位法的な要素も感じられる。完全即興でこれだけ入り組んだ、完成度の高い音楽ができるということ自体驚異的だ。

さすがバッハへの造詣が深いキース・ジャレットだが、やはりジャズピアニストならではの響きが微妙に混ざり、美しい世界を作り出している。

数あるキースジャレットのソロ・コンサートの中でも、ベスト3に入る名盤だと私は思う。とにかく聴いてみるべし。